メッセージ
がん患者本人から皆さんに伝えたいこと
(がん患者の支援をされている桜井なおみさんより)
私は当事者としてのがん体験と、家族としてのがん体験があります。
がんと診断された当時は30代。私の身内でがんになった人はみんな亡くなっていたこともあり、「自分が死ぬ」としか思えませんでした。ですので、一番困ったのは、「親になんと言おうか?」ということでした。治療計画や病院が決まってから伝えましたが、案の定、母親は大混乱に陥り、泣き崩れました。「そんな身体に産んでしまってごめんなさい」という母の言葉は本当に重く、以来、家族の前では心配かけさせまいと明るく振舞うようにしました。
家族の立場になったのは、自分の罹患より10年前、大学生の時でした。単身赴任中の父が突然赴任先から戻り、「パパね、がんになっちゃったよ」、そう告げられました。すい臓がんでした。その病名が意味することもよくわからないままお見舞いへ行くと、ベッドの上で父は戒名を考えていました。
「梅の字を入れたほうがいいかな?それとも桜のほうがいいかな」と聞かれ、「どっちでもいいんじゃない」と私は答えました。でも、「あのとき、もっと父の心に寄り添えたのなら」、「あのとき、もっと病気のことを知ろうとしていたら」、そんな後悔は数十年たった今でも残っています。今から思えば、梅の花が咲く頃まで生きられるのか、桜の花まで生きられるのか。そんなことを思って、父は父なりに一生懸命考えていたのでしょう。
家族は第二の患者といいます。でも、本人を目の前にして、苦しい、悲しい、悔しいという感情を吐露することもできません。そして、本人も、大好きな人との距離が近ければ近いほど、言いにくいことがあります。
頼ること、辛いとクチにだすこと、涙を流すこと。そんな当たり前の感情をおもてにだして良いのだと言ってくれる場があれば、それを受け止めてくれる場があれば、どれだけ素直になれたでしょう。
このサイトが、これからを生きる人にとって、そして、大切な人を失い、後悔の気持ちでいっぱいになっている人にとって、光を与える「道しるべ」になることを祈っています。
キャンサー・ソリューションズ株式会社
桜井なおみ